電気工事に関しては、建設業許可を取得していても電気工事業の手続きをしなければ、電気工事を行えない場合があります。建設業許可を取得しても自社で電気工事を施工する場合には、電気工事業登録(届出)が必要です。どのような場合に電気工事業登録(届出)が必要なのでしょうか?

今回は建設業許可と電気工事業登録の違いについて詳しく解説していきます。

建設業許可とは

建設工事の完成を請負ことを営業するには、その工事が公共工事であるか民間工事であるかを問わず、軽微な工事を除いて建設業の許可を受けなければなりません。

軽微な工事

1.建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

2.建築一式以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事

電気工事業とは

電気工事を業として行う場合には以下の手続きのいづれかが必要です。

  1. 登録・・・一般用電気工作物の工事をして建設業許可を取得していない事業者
  2. 届出・・・一般用電気工作物の工事をして建設業許可を取得している事業者
  3. 通知・・・一般用電気工作物の工事をせず建設業許可を取得していない事業者
  4. みなし通知・・・一般用電気工作物の工事をせず建設業許可を取得している事業者
一般用電気工作物

主に一般住宅や小規模な店舗、事務所などのように、他の者から600V以下の電圧で受電している場所等の電気工作物をいいます。

自家用電気工作物

主に工場やビルなどのように電気事業者から600V以上の電圧で受電している事業所等に電気工作物をいいます。

建設業許可と電気工事業登録の法律の違い

建設業許可

建設業法

第1条 この法律は建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

主な目的は

  • 建設工事の適正な施工の確保
  • 発注者保護
  • 建設業の健全な発達の促進
  • 公共の福祉の増進に寄与

電気工事業登録

電気工事業の業務の適正化に関する法律【電気工事業法】

電気工事業を行おうとする方は電気工事業の業務の適正化に関する法律により営業所所在地を管轄する都道府県知事により登録を受けなければなりません。

主な目的は

電気工事業を営む者の登録及びその業務の規制を行うことにより、その業務の適正な実施を確保し、一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安の確保に資することです。

電気工事は素人が行うと非常に危険であるため、電気工事士の資格を持っていても、会社や個人事業主が業(お金をもらって仕事をする)として電気工事を行う場合は必ず電気工事業登録を受けてください。

建設業許可と電気工事業登録の要件の違い

建設業許可要件

建設業許可要件は主に6つあります。

1.建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を備えていること(常勤役員等)

建設業の経営経験が5年以上の事業主または常勤の役員がいる

2.適切な社会保険に加入していること

適用除外になる場合を除いて適切な社会保険に加入していなければならない

3.専任の技術者がいること

業種に必要な国家資格者又は10年以上(学歴による)の実務経験があるものが営業所に常勤している

4.請負契約に関して誠実性があること

請負契約に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要

5.請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用があること

自己資本500万円以上又は500万円以上の資金調達能力がある

6.欠格要件に該当しないこと

欠格要件に該当しないこととは

1.許可申請書又はその添付書類中に重要な事項についての虚偽記載がある
2.許可申請書又はその添付書類中に重要な事実の記載が欠けている
3.精神の機能障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
4.破産手続き開始を受け復権を得ない者
5.不正の手段により建設業許可を受けたこと等により、その許可を取り消されその取消しの日から5年を経過しない者
6.建設業の取消を免れるために廃業の届け出をしてから5年を経過しない者
7.建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼした者、あるいは危害を及ぼすおそれが大である者
8.請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業停止を命ぜられ、その停止期間が経過しない者
9.禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

10.一定の法律違反により罰金刑を処せられ、その刑の執行が終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

11.暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

12.暴力団員等がその事業活動を支配する者

電気工事業登録要件

電気工事業登録の要件は主に3つあります。

1.主任電気工事士の設置(営業所ごと)

主任電気工事士の設置が営業所ごとに必要です。主任電気工事士になることができる要件は

第一種電気工事士免状を取得していること

第二種電気工事士で免状取得後3年以上の実務経験を有し、証明できること

注)2つ以上の営業所の主任電気工事士を兼務することはできません

2.事業者、法人役員及び主任電気工事士が欠格要件に該当しないこと

事業者・法人役員・主任電気工事士が【電気工事業法】・【電気工事士法】・【電気用品安全法】に違反したことがある場合は、登録できないことがあります。

3.工事後の確認用の検査器具を営業所に備えつけていること

電気工事が適正に施工されたかどうかを検査するための器具を営業所に備えつけなければなりません。

一般用電気工作物の工事のみを行う場合
  • 絶縁抵抗計
  • 接地抵抗計
  • 抵抗及び交流電圧を測定できる回路計
自家用電気工作物の工事も行う場合
  • 絶縁抵抗計
  • 接地抵抗計
  • 抵抗及び交流電圧を測定できる回路計
  • 低圧検電器
  • 高圧検電器
  • 継電器試験装置(借用・計測依頼等で対応可)
  • 絶縁耐力試験装置(借用・計測依頼等で対応可)

手数料の違い

申請内容申請手数料
建設業許可 新規90,000円
電気工事業 登録 新規22,000円
電気工事業 届出 新規0円
電気工事業 通知 新規0円
電気工事業 みなし通知 新規0円
建設業許可 更新50,000円
電気工事業 登録 更新12,000円

上記他に行政書士に依頼する場合は別途報酬費用が発生します。

登録後の違い

電気工事業登録

1.標識の設置(事務所、現場)

2.登録の更新(5年に一回)

3.帳簿の備付

建設業許可

1.標識の設置(事務所、現場)

2.登録の更新(5年に一回)

3.決算日から4か月以内に事業年度終了報告を提出(毎年)

まとめ

今回は建設業許可と電気工事業登録の違いについて解説しました。

建設業許可だけ取得していて電気工事業(届出、みなし通知)の手続きを行っていない場合は電気工事を施工することはできません。ただし、元請になり、工事を行わないで下請けが工事を行う場合には、建設業許可のみで構いません。

また、自社で一般用工作物及び自家用工作物の電気工事を業として行う場合は、建設業許可を取得していても、取得していなくても、電気工事業(登録)(届出)(通知)(みなし通知)は必ず行ってください。

電気工事に関しては、建設業許可と電気工事業の手続きは『別ものである』ということです。

事業者の状況にて、建設業許可のみで良い場合もありますし、電気工事業の手続きだけで良い場合もありますし、建設業許可と電気工事業の手続き両方を行わなければならない場合もありますので、自分の状況にあった申請や手続きをすることが必要になります。

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